気味が悪い

気味が悪い


所詮きみは呪われた子なのさ。



【ペルソナの仮面】



「………」
朝起きて、大きなあくびを一つ。
目を擦りながらぼんやりとした脳を叩き起こすために僕は洗面所へ足を向け
た。


蛇口を捻れば当たり前のように出る冷水を肌に浴びせて濡れた前髪を掻き上げる

昔は気にしていた、色の抜けたこのプラチナブロンドも今はもう慣れっこ。
ここではそんなこと気にする必要もないし、後ろ指を指す人間もいないから。
さすがに目立ちすぎるために、人の雪崩のなかではフードで隠すけども。


一つ息を吐き、顔を上げれば自然と鏡の中の自分と視線が合わさる。



呪われた左目。
呪われた自分。
神の祝福を左手に受けながらアクマの呪いを左腕に受けるとはなんと皮肉なこと
か。
例え貴重な神の使徒とみなに褒めそやされても、結局自分は他の人間とは何ら変
わりないのにと思った。


人を好きになれば、
愛することだってできる。

憎悪・嫉妬、そんな感情だってごく普通にあるのだ。


以前、黒髪の同僚である彼に言われたことがある。

「お前は得体の知れないやつだな。その本性をいつだって隠してる」

吐かれた言葉は刄となって僕に突き刺さった。
確かに僕は呪われているけども、君たちとは何ら変わりのない人間なのに。
食えないと思った。
あの時は笑ってはぐらかしたけども、確信を突かれた僕は、果たしてうまく笑っ
ていられただろうか?



まったく、ジャパニーズは清楚でしたたかというけどもあれはとんでもない嘘だ
と思う。
闇をあわせても闇にしかならないあの射ぬくような瞳には到底お目にかかりたく
ない。
おまえの考えてる事なんて手に取るようにわかるさ、なんて言われているようで
恐ろしくてたまらなかった。
無言の圧力ほど僕が嫌いなものはないのだ。




それを知ってか知らずか、<font color=#bbbbb2>(多分後者だろう。前者だった
ら尚更タチが悪い)</font>彼が僕に与えるのは、限りない拒絶と底無しの圧力。
嫌うのは勝手にどうぞ、と言いたいところだけども、露骨にあんな態度を取られ
るとさすがに僕もあまりいい気はしない。
しかしそれを言ってどうなる?
もれなく舌打ち付きのオプションで『うるせぇ』の一言で一蹴されてしまうこと
だろう。
彼はそういう人間だから。




ああもう、まったく。
僕はタオルを手に取ると、水気をおおいに含んだ髪を手荒に拭き始めた。







いペルソナ。
呪われた人間にはそれなりの道を。



〔2006.1.14 黒崎〕